2011年7月29日金曜日

米国債務上限問題


世の中には「お約束」といわれるものがある。

ダチョウ倶楽部には「どうぞどうぞ」という厳しい芸に導く「お約束」があるし、水戸黄門ではしばし悪役を懲らしめたところで、やにわに「三つ葉葵の御紋所」を出す段取りになっている。これが無ければ助さん格さんは果てしない殺戮を繰り返すことになってしまうだろう。

米国債務上限交渉にもこの「お約束」があったはずだった。2012年の選挙を睨み、それまでにもう一度債務上限を問題化しオバマ政権にダメージを与えたい共和党(低い上限)と、できれば選挙前にはこの問題を再び持ち出したくは無いオバマ政権(高い上限)との間でギリギリのやり取りを通じて、それでも予定調和的に8月2日のデッド・ラインまでには「御紋所」が登場しなければならないはずだった。

しかし現実には昨年の中間選挙で登場した共和党Tea Party(特に新人議員、日本の何とかチルドレン)が想定外に経済音痴で尚且つ頑なために、彼/彼女達は必要以上にアメリカをデフォルトの危機に晒しただけではなく、経済学者、評論家、市場関係者がまさかと思う中、アメリカをもしかしたら本当にデフォルトがあるかもしれないという危険な状況に押しやっているのである。

そしてこうした政治的混迷を受け格付会社ムーディーズは今月14日の時点で債務支払いを1回でも不履行すれば、翌日には直ちに米国債の格付けを引き下げる方針を表明した。これは当たり前だろう。債務不履行をデフォルトと呼ぶのである。 そして昨日のニュースでS&Pは、「仮に議会が合意に至ったとしても4兆ドル規模の抜本的な財政赤字削減策が講じられない限り、米国債の格付けを90日以内に格下げする可能性が少なくとも50%ある」との見解を示した。それはそのはずで4兆ドル以下の合意であれば債務削減がすすむはずもなく、早晩同じ問題で再びアメリカは揉めることになるからである。

政府の支払いエージェントであるFRBはデフォルトの際の具体策(マニュアル)を、混乱を助長する恐れがあるとして、出し渋っていたが、29日には関係金融機関に対して示す運びになった。
金融機関の知りたい情報は以下だろうか。この当たりはワッチしておく必要があると思う。(FT参考) 漠然とデフォルトなんかあるわけも無いとイメージして、思考停止していることは危険である。
  • デフォルト後に米国債担保でFRBから資金供給を受けられるのか?
  • 米国債入札で売れ残りが出た場合、FRBはこれを購入するのか。ファイナンスするのか?
  • MMFで取り付け騒ぎが出た場合にFRBは流動性を供給してくれるのか?
  • 同様に預金流出した場合にFRBは流動性を供給してくれるのか?
  • 米国債の価値下落の場合に時価評価しなくても良いのか?自己資本比率や流動性に関する規制はどうなるのか?


一方でISDA(国際スワップデリバティブ協会)はギリシャ救済案を「民間銀行による自発的な救済である」としてデフォルト認定しなかったが、もしアメリカが利払い遅延をしても3日間のグレース・ピリオド(支払い猶予期間)を与えることになっているようである。

さて色々と煮詰まってきたわけであるが、ひとつだけ確かなことは、仮に今回合意に至り目先の危機回避ができたとしても、米国は2012年の選挙まではこうした不安定な状況が続くということだろう。

株式市場は「不安な坂を駆け登る」と昔からいうが、割切って対処することが「お約束」だろうと思う。

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