2017年6月27日火曜日

【高論卓説】米国株、長期的には強気


高論卓説】米国株、長期的には強気 地政学リスク抱えながらも上昇 2007.6.27 フジサンケイ・ビジネスアイ

 世界各国の株式市場が高値を更新している。原油価格の低下とインフレなき金利低下。楽観的な企業収益拡大が伝えられる一方で、デフレに対する懸念に加え、トランプ政権の継続性や欧州連合の先行き、あるいはシリアや北朝鮮問題など地政学上の不安を抱えながらの高値更新である。昔から「株式は不安の坂を駆け登る」ということわざもある。

 先週までの10週間、筆者は早稲田大学の社会人講座で週1回の金融史の授業を持った。授業では将来の株価を予想するようなことはしないが現在のわれわれの立ち位置を最後に確認した。今回はその話をしたい。

 筆者の推計では、最近の日本の株式市場の水準は米国市場とドル円相場によって約90%の説明がついてしまう。そこで日本市場の先行きを考えるには米国株式市場水準の現状の立ち位置が最重要のポイントとなる。




 グラフは1920年からの米国の代表的な株式指数であるS&P500種である。第二次世界大戦を挟み、まともに株価チャートを描けるのは世界でも米市場しかない。大きな特徴として、株価に対して消費者物価指数を使用しインフレ分を減額してある。例えば(3)の70年代の米国市場は、普通の株価チャートでは横ばいに描かれるが、インフレを加味すると、実は株式投資家の実質資産は半分になっていた。また縦軸には対数を使用してグラフの傾斜がそのまま変化率を表すようにしてある。過去の相場の上昇率との比較ができるからだ。

 (1)は大恐慌から第二次世界大戦後の混乱収束までの弱気相場である。(2)はその後の世界経済の回復期、旧ソ連との冷戦時代だが、ばかでかい「アメ車」に大量消費の黄金時代でもあった。(3)はベトナム戦争とドルの下落で疲弊した米国の没落期、日本や西ドイツが米国の覇権に迫った時期でもある。
そして(4)はレーガン大統領とボルカー連銀総裁が米国のインフレを退治して再び米国が輝き出した時期である。日本のバブル時代を経て、ベルリンの壁が壊されて冷戦が終結した。パソコンと通信技術が発達して米国は2000年のハイテクバブルでピークを迎えた。

 こうしてグラフを見てみると、米株式市場は(5)の終わりのリーマン・ショックでピークを打ったわけではなく、むしろリーマン・ショックはハイテクバブルからの(5)の局面の調整の大底であったのだ。であるならば長期的な観点から、現在の米株式市場の位置は(6)という新しい上昇相場の中にあることが分かるだろう。今は何かを整理しているのではなく、何かが始まっていると考えるのだ。

 過去の(2)の上昇相場では413%、(4)では660%の上昇があったが、現在の(6)ではまだ179%の位置でしかない。一方で上昇率は(2)が年率8.7%、(4)が12.1%、現在は13.3%である。株式市場はインフレ率を加味しても、ずっと成長を続けてきたことが分かるだろう。




 このグラフの持つ将来の株式市場の水準に対する予見性は、過去と比較して多いか少ないかであって、残念ながらせいぜい星占い程度のものでしかない。しかし、少なくともこの長い期間にわたるグラフは、株式市場に対して悲観的な者は、得るものが少なかったことを示している。

板谷敏彦